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Vol.12
仲佐猛、キーマンとともに(その5)
photo
塩見一郎 /spinoff 代表取締役(左)


Lunch talking in Seoul
spinoff 塩見一郎のデザインと展望

「刃物のように、鋭くあれ!」

それは6月初旬にしては30度を超える暑い日だったからかもしれない。
はたまた前日、不夜城・ソウルの街でたらふく肉を食べたせいかもしれない。
写真を通してインテリア業界を長年にわたり見つめてきた写真家・仲佐猛の隣には、XEXやサルバトーレなど話題のレストランやショップなどの商空間インテリアデザインを数多く手掛けるデザイナー・spinoffの塩見一郎氏。
塩見氏を迎えての当初の対談のテーマは「アジアに広まるジャパンデザイン」。 アジア各国でプロジェクトを手がける2人の異なる視点から、日本のデザインを俯瞰するという試み。
しかし仲佐は、この勢いのある元気なソウルという街にいるからなのか――。
本コラムシリーズが始まって以来、かつてないほどに饒舌な仲佐。その激しいツッコミを受け止める塩見氏。
饒舌の理由はともあれ、当初のテーマを逸脱した夢の様な(?)豪快対談が実現しました。 (2012年7月)

文: 柳澤大樹(フリーエディター)
編集: 大原信子(株式会社ナカサアンドパートナーズ)



01.目指すは「ドス」!

02.「まわり」にいるキャラクター
03.関西人とデザイン
04.塩見流のこだわり
05.まずはドアを蹴ろう


写真塩見 一郎(しおみ いちろう)
spinoff 代表取締役

1962年兵庫県生まれ。大阪芸術大学デザイン科卒業。インテリアデザインオフィス ノブにて吉尾浩次氏に師事。1992年イズ アーキテクツ&アソシエイツを設立。
1999年spinoffを設立。XEX Tokyo、Soup Stock Tokyo、The Kitchen Salvatore Cuomoなどの飲食店をはじめとする多数の商空間を手掛けている。近年は上海、バンコク、ソウルなどアジアを中心に海外へ活動の場を広げている。



01.目指すは「ドス」!

写真仲佐: 海外での仕事、最近は多いほうなの?

塩見: 多いですね。もう6〜7割がアジアを中心とした海外の仕事です。きっかけですが、クライアントが日本で僕が設計したお店を見て人づてに連絡をしてくるというケースの他に、たまに突然メールが届いて、降って湧いてくる案件もあります。よく似た名前のデザイン事務所がたくさんあるから「別の事務所と間違えてるんじゃないの?」ってたまに思ったりするようなものもありますよ。「ウチみたいな小さい事務所が、なんでこんなデカいコンペに招聘されるのかな?」って。(笑)

仲佐: このお店(ザ・キッチン・サルバトーレ・クオモ)も塩見さんが手がけたんでしょ?

塩見: そうです。昔からXEXなどで仕事をご一緒させていただいている、ワイズテーブルコーポレーションさんのご縁です。基本的にデザインのスタンスは日本、海外問わず変わらず仕事をしているつもりです。ここも元々は日本にあった店だから、お店だけを見ると日本にいるみたいでしょ。けど、ソウルではコリアン・セレブや俳優が集うお店になっているようです。海外の仕事ですが「今こそ」海外に出ないといけないという気持ちがあって。僕らの世代が外に出ていって、海外で日本人デザイナーとしての下地、ブランドをつくる。それが後に、下の世代のデザイナー達への進出のきっかけとなれば嬉しいと思っています。

仲佐: ……。今回は大学の講義とかどこかのセミナーをやっているわけじゃないから、そんな優等生な回答ではなくていいんだよ!(笑) 前から思っていたんだけど、塩見のこれまでの仕事ぶりと実績を考えると、もっと牛耳る立場にいてもいいと思うんだよね。それに、世界をアッと言わせるもっとスゴイ仕事をやってほしい。なんていうのかな……例えば、塩見は「ドス」でいてほしいんだよね! 橋本夕紀夫が「包み込む」デザインなら、塩見は「ドス」のデザイン!(笑)

塩見: えぇ〜!「ドス」って何ですか?!前回のコラムはバルスの高島さんを特集したかっこいい記事だったのに、今回は「ドス」ですか!

仲佐: 塩見は性格が地味だからかな?! 丁寧すぎるのがいけない。それが最大のテーマというか、壁かも。

塩見: 僕は普通にしているだけですけどね……。

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02.「まわり」にいるキャラクター

仲佐: 例えばこういうのはどうだろう? 塩見が突き抜けるんじゃなくて、「まわり」にやらせるっていうのは。

塩見: まわりってスタッフってことですか? だれかいますかね。

仲佐: ほら、広報のような人いたじゃない。

塩見: 宍倉麻衣ですか。彼女はデザイナーですよ。

仲佐: そうそう! すごくキャラが立っていて、物応じしないのがすごく良いと思う。塩見はこれまでのストイックな感じに徹して、まわりがspinoffのイメージを変えていくっていうのはどうだろう。だって、本来ならナカサアンドパートナーズも上品な会社のはずなんだよ。俺がオーナーなんだし、俺自身はすごくジェントリーでナイーブな性格。けどなぜか、巷ではナカサアンドパートナーズはそんな印象は無いという……。(笑) それはナカサアンドパートナーズに所属する俺以外の、別の人間の存在によるものだと思うんだ。

塩見: 中道さんですね。その理由は。

仲佐: そうか、中道か! ああいう出前のパフォーマンスなんてしてさ! 関西人だもんね。

塩見: ああいうふうになっちゃうんです、関西の人って。みんなサービス精神があるんです。

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03.関西人とデザイン

仲佐: デザインの観点からみて「関西人」らしさっていうのは、塩見にあるのかな?

塩見: うーん、デザインというより、なんでも笑いをとろうとするところかな。あと、僕も含めてそうですが、めげないですね。なんでも糧にしてしまう。

仲佐: それに加えてあとは上品っぽいところも抜いちゃうといいかもね。品の良い悪いとかじゃなくて、別の次元で勝負みたいな。

塩見: けど品でいうと上海とか香港でデザインとなると、やっぱり派手でギラギラしている感じを求められる気がして。「中国は僕にはあわないのかな」と思いながらこの前北京に行ったら、イメージが変わりました。僕でもいけそう。ということで最近は北京の仕事をしたいと思っています。

仲佐: そこで関西人らしさを出してもらってね。(笑) 思いっきり。

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04.塩見流のこだわり

塩見: けど僕自身も変わらなければダメっていうのは考えているんです。年とキャリアを重ねながら、同じスタイルでずっとやっていくのは難しい。

仲佐: 僕から言わせてもらうと今のデザインっていうのは全般的にどれもこなれていて、それなりに洗練されている。けど「なんとなく品が良いデザイン」なんてもういらないよ! 一度、今の状態のものを捨ててしまうのもいいかも。もっと角がたってもいいんじゃないかな。それも、自分自身のデザインをクライアントに無理強いするくらいの勢いで。バブルが崩壊する前の頃はそれができたんだけどね。

塩見: そうですね。その文脈だと、僕には自分のデザインを通す心得があって。クライアントから自分の提案に対して、「こうしてくれ」って言われる時があるじゃないですか。仮にそのお願いが、全体の調和からみて良いものとは思わないとする――。若い時は無理強いするぐらい真っ向からその意見に立ち向かっていきましたが、今では相手がしびれを切らすまで放っておくんです。相手が「あの件、どうなっているの?」と聞いてきた時に、こちらからしれっと「あの件ですが、やっぱりこちらの方がいいんじゃないですか?」と提案する。そうすると意外とすんなりいったりするもんなんです。最終的なアウトプットがマイナスなものだったら本末転倒。そのあたりはこだわって、ハネるものはハネるようにしています。


05.まずはドアを蹴ろう

仲佐: けど塩見が「ドス」となるにはどうすればいいだろうね。

塩見: また、そこですか。(笑) 宍倉にやってもらうって手もあるけど、まずは僕自身の態度からってことで、今後仲佐さんの事務所にお伺いするときはドアを蹴って開けますよ。まずはそこから。「ピンポーン、ガーン!」って。(笑い)自分の事務所に帰った時もやりましょうか。「今帰ったぜ! ガーン!」って。けど今回の対談、こんなでよかったんですかねぇ。

仲佐: いいんだよ! たまには突き抜けた方が! デザインも塩見もそう! エッジをたてなきゃ!



文:柳澤大樹(フリーエディター)
インタビュアー&編集:大原信子(株式会社ナカサアンドパートナーズ)