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Vol.11
バルス・髙島郁夫の仕事の居場所
〜アジア、そして世界へ〜
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髙島郁夫 / 株式会社バルス 代表取締役社長


「社長の仕事は現場にありき」。

こう断言する株式会社バルス代表取締役社長の髙島郁夫氏。
インテリア商品、家具、雑貨を扱うバルスにとっての現場、それは工場と店舗であるという。
髙島氏にとっては、この「現場」の捉え方は日本のみでは完結しない。
アジア全体を「現場」として捉え、さらに未来を見据えて、アジアのみならず欧米諸国も飛び回る髙島氏。

香港島の摩天楼と再開発が進む旧啓徳空港が見渡せるバルス香港オフィスで、アジアの今、社長業の今、そして高島氏の今と今後を語っていただきました。 (2011年7月)

文: 柳澤大樹(フリーエディター)
編集: 大原信子(株式会社ナカサアンドパートナーズ)



01.東京ハブから香港ハブへ

02.香港デザインの底力
03.社長の仕事って何だろう?
04.週末は八丈島でバカンス計画
05.ライフスタイル界のイチローに


写真髙島郁夫(たかしま ふみお)
株式会社バルス 代表取締役社長

1956年福井県生まれ。関西大学経済学部卒業後、マルイチセーリング株式会社入社。1990年株式会社バルスを設立。株式会社バルスではFrancfrancを中心に、BALS TOKYO、J-PERIOD、 About a girl、 WTWなどのインテリアショップを展開。近年では大型路面店や海外への進出などアグレッシブな店舗展開が行われている。髙島氏の趣味はトライアスロンとサーフィン。著書に「フランフランを経営しながら考えたこと」(経済界)、「遊ばない社員はいらない」(ダイヤモンド社)がある。



01.東京ハブから香港ハブへ

写真近年はアジア地域での出店が相次ぐFrancfranc。東京発の「カジュアルスタイリッシュ」の波は香港、韓国、中国、台湾に飛び火し、今ではアジア諸国で15店舗が運営されている。アジアに進出しているのは店舗だけではない。Francfrancを率いるバルスの髙島郁夫社長も、昨年から生活の拠点を徐々に香港に移しつつあるのだ。今年5月には香港の居住者とみなされるIDカードを取得。今後は香港・中国をはじめとするアジアを中心に据えて活動していくのだろうか・・・。

そもそも会社として香港に進出したのは8年前の2003年。香港島の繁華街、コーズウェイ・ベイのビルにFrancfrancの1号店を開店させました。その店が海外での初出店となったわけですが、香港を選んだ理由は経済環境、文化を含めて日本に近いと思ったから。海外展開における「練習」を香港でできればと思ったわけです。黒字化させるのに5年かかりましたが、この店でノウハウを蓄積し、現在は上海に3店、香港にBALS TOKYOとAbout a girlを含む5店、台湾に4店、ソウルに3店、合計15店舗を展開するに至りました。

ありきたりな言葉ですが、香港はとにかくパワフルで元気な街。日本よりもパワーがあるし、やる気が出る。肌に合いますね。唯一、唯一、残念なのは約4年以上続けているトライアスロンの自転車の練習ができないこと。香港で自転車となると、中心地を離れないと厳しいですから・・・。この環境が故に、可能な限り週末は東京で過ごすようにしています。(笑) 近所の多摩川でジョギングもできますし。

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02.香港デザインの底力

写真Francfrancは商品調達の多くを中国から行っている。それが故に香港滞在時は、工場のある深センをはじめとする珠江デルタ地域へ頻繁に足を延ばす。なにかと「製造の現場」として捉えられがちの華南区域だが、髙島社長は、「デザインの現場」としての印象も持っているという。

2007年にHong Kong Design Instituteというデザイン学校の新キャンパスがオープンしました。過去にキャンパスの見学へ訪れたことがあるのですが、話を聞いていると企業と学校がビジネスベースで共同に商品開発を行うケースが多いことに気づきました。企業が学生の編みだしたデザインを採用した場合、しかるべきロイヤリティを学校側に支払う。本質的な意味での産学協同の環境が構築されているわけです。

その点、日本の美大ではビジネスベースでの繋がりが香港ほど活発ではないような気がします。4年間の教育の集大成が「卒業展示」で終わってしまう。作品を作るということが、ビジネスとどのように繋がってくのか・・・。この溝を埋める教育がなされていないのが残念です。

そもそも僕の認識は、「優れたデザイナーは、優れたプレゼンターでもある」ということ。BALS TOKYOやFrancfrancのインテリアデザインを行った森田恭通氏(グラマラス代表)は優れたデザイナーである上に、優れた営業マンでもあるわけです。香港をベースに活躍するアラン・チャン氏もそうであるでしょう。ちなみにバルスの香港オフィスでは現地のデザイナーを2人雇っていますが、非常に優秀です。

最近では店舗や家具デザインで小坂竜氏(A.N.D. クリエイティブディレクター)とも仕事をしていますが、一緒に仕事をしたいと思うデザイナーと言えば、米国のトニー・チー氏も気になりますね。ホテルインテリアで活躍する彼にプロダクトを作ってもらえたらとか。そして今後活躍が期待される香港の若いクリエイターとも何かできたらと思っています。

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03.社長の仕事って何だろう?

元々は家具メーカーに勤務していた髙島社長。そんな彼の信念は「超現場主義」。「現場」のことを考えると、香港をはじめとするアジアに軸足を定めるのはいたって自然の流れであるという。

香港に拠点を作ったのは商品調達の大部分を中国をはじめとするアジアで行っているから。「製造の現場」がアジアにあるわけです。香港をハブとして動けばベトナムやインド、中国本土にもアクセスしやすいので、非常に便利です。

写真いつも社長の仕事ってなんだろうと考えています。経理ならお金を扱っている人だし、デザイナーはモノづくりを行っている。いたってわかりやすい。この問いに対して熟考した末、僕が思った社長の仕事というのは「現場にいる」ということ。僕の商売における現場の川上は「工場」で、川下の現場は「お店」。そのような意味では、「川上」は香港を中心として活動した方が合理的だし、「川下」の方もアジアや全国にある店舗をまわる分にはベースとなる場所を問いません。

バルスがファッションブランドだったら現場も若い人に任せていいと思います。ただ、インテリアを扱うとなると若い人だけだと難しい。生活経験が豊富ではないため、縫製をはじめとする家具のディテールを理解できている人が少ないのです。その点ではまだ、僕が社長として現場を取り仕切る必要があるかと思います。

僕は家具メーカーの出身。工場のことが気になって仕方がないのです。仮に製品のクレームがでたとしたら、商品をいくらチェックしてもダメ。工場のラインの中で、どこが悪いかチェックしないと問題の本質を理解することができないのです。

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04.週末は八丈島でバカンス計画
プライベートではトライアスロンに熱中し、2008年にはトライアスロン仲間で競技啓蒙のための会社、株式会社アスロニアを設立。現在、にわかに意識をしているのは、東京の南285キロに浮かぶ島、八丈島だという。

会社としてではなく個人的に興味を持っていることですが、東京から週末フラっと行って、島のゆっくりとした雰囲気を堪能できる場所を作ってみたいと思っています。国内で島のバカンスと言えば、真っ先に思いつくのは沖縄でしょうけど、ホテルまでの到着時間を考えると都内から4-5時間はかかってしまう。その点、八丈島なら羽田から飛行機で50分。しかも僕は偶然この地に土地をもっていることから、ここで「何かやりたいな」と。

写真金曜日の夜か土曜日の朝に羽田を発って、到着後は読みたい本を読んだり見たいDVDを見たり・・・。ワンテーマで、都会の喧騒から離れた非日常的な週末を楽しむ。そんな楽しみ方ができるホテルを建ててみたいなと思っています。島では野菜も魚も採れるし、牛もいる。木材も豊富だし、火山島なので石をベースとした建材も豊富。地産地消をテーマにゆっくりと時が流れる場を作ってみたいですね。もちろん、 オペレーションは野田豊加氏(プラン・ドゥ・シー代表)に任せてね。(笑)



05.ライフスタイル界のイチローに
かつて「56歳になったら業務の前線を退く」と公言していた髙島社長。あと1年を切った今の心境は・・・。

そのように公言していたときにイメージしていた「完成形」というのが自分の中にあったのですが、その形はすでに達成されました。その後のことなのですが、昨年から香港に軸足を移して活動を始めたのが原因で「理想の完成形」がさらに上のレベルになってしまったのです。そう思うようになった以上、新たなゴールに辿りつくまでは辞められないな、と。前は日本だけを見ていればよかったのですが、これからは文字通りグローバルに展開をしていきます。作るところ、売るところにしてもアジアだけではなく、世界中が対象になりうるということがわかりました。香港で言えば最近、ワンチャイにあるStar Streetという通りが面白くて、WTWを出店したら面白いんじゃないかな、と思っています。その他にも米国への進出も考えています。

写真近々では、駅ナカで展開できるような「キヨスク型」の店舗を考えています。日本なら1,000店舗、香港なら50から100店舗を目指しています。場所柄、時間帯により商品の需要が異なるので、朝と夜で容易に商品を入れ替えるような仕組みを導入する予定です。また、Francfranc全体としてはこれまで目指してきた「25歳OL、一人暮らし」というターゲットから、すこし大人っぽい仕様の店舗をつくろうと思っています。

イチローがヒットを打てば日本が湧き、日本人として誇りに思えるようになる。僕は別の切り口で海外へ進出し、日本人として前向きになれる環境を作ることができれば本望です。



文:柳澤大樹(フリーエディター)
インタビュアー&編集:大原信子(株式会社ナカサアンドパートナーズ)