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Vol.10
新生オリエンタルホテル神戸 開業レポート
Part 1.
 対談 Plan・Do・See 岡田崇 × A.N.D. 小坂竜
 “最高のチーム、最高のプロジェクト”
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「オリエンタルホテル」プロジェクトの最前線に立ち、現場を取り仕切っていたPlan・Do・Seeの開発担当、岡田崇氏とインテリアデザインを手がけたA.N.D.小坂竜氏が2010年2月17日にホテルで再会。グランドオープンを2週間後に控える超多忙な中、プロジェクト始動からこれまでの3年間の思いを、余すことなく語っていただきました。(2010年3月)



01.「ラッフルズホテル」から「混沌としたアジア」へ

02.オーナーとデザイナーの信頼関係
03.誰よりもまず、地元の人々に愛されたい
04.次のステージへ


写真岡田 崇 (おかだ たかし)

Plan・Do・See コーポレートマネジメント室 マネージャー
1975年鳥取県生まれ。埼玉大学にて建設関係を学ぶ。大学卒業後、建設会社へ入社。ハードと同じぐらいソフトが重要だということに気づき、2001年にPlan・Do・Seeに入社。同社が築き上げた数多くのレストラン、ホテルの事業企画に携わる。Plan・Do・Seeは、野田豊加氏が代表を務め、ホテル・レストラン・ウエディングなどの運営・企画・コンサルティングを展開。近年ではニューヨーク・トライベッカにも進出。



写真小坂 竜 (こさか りゅう)

A.N.D.クリエイティブディレクター
1960年東京生まれ。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。1985年乃村工藝社入社。現、同社商環境事業本部 A.N.D.(Aoyama Nomura Design)クリエイティブディレクター。「マンダリンオリエンタル東京メインダイニング」、「新丸ビル」の環境デザイン、「With the Style福岡」など、数多くの話題の飲食店やホテルのデザインを手がけ、近年では活躍の場を香港・マカオなどの海外にも拡げている。



01.「ラッフルズホテル」から「混沌としたアジア」へ

写真岡田:最初に不動産運営会社のジョーンズ ラング ラサールから「オリエンタルホテル」プロジェクトへの参加打診があったのは2006年春。その後プレゼンを経て2007年6月に契約に至りました。そこから基本設計を(小坂)竜さんチームに練っていただいたのですよね。

小坂:今回は内装のみならず、建物のブランディングの段階からPlan・Do・See側のコンサルタントのような立場で関わっていました。法規的な問題や予算のバランスをとるのが大変でしたが、今回は生み出したい世界観をハコの段階から作れたので面白かったですね。
例えばロビーのある最上階の17階を見てもらうとわかるのですが、下の客室階と比べて海側が一層外に突き出ているのです。こうすることにより、エレベーターを降りてからフロアの外周を一周できる動線が作れるのです。ちなみにこれは野田さん(Plan・Do・See代表)のアイデアでしたよ。

岡田:この「オリエンタルホテル」は元々、1870年頃に誕生した老舗中の老舗ホテル。大戦時の空襲などを受け、場所を旧居留地の中で何度も移したという歴史を持っています。今回は15年ぶりにこの由緒ある名を冠したホテルを再オープンさせるわけですが、当初野田のアタマの中にあったイメージは、シンガポールの「ラッフルズホテル」でした。

小坂:この野田さんの思いをうまく形にするのが、最も大変でした。仮に「ラッフルズ風」にしたとしても、オリジナルの真似になってしまう。
建物自体は立派になりますが、その土地の背景を考慮しない施設になってしまい浮いてしまいます。今回はゼロからホテルを作れる機会だったので「そもそも『オリエンタル』ってなんだ?」と考えるところから始めるべきだと思いました。ホテルを訪れる人にどこでどのように「オリエンタルホテル」らしさ、また「オリエントの香り」を感じてもらえるか・・・。そこで気づいたのが「日本から見たアジアと世界から見たアジアという二つの視点が、考え方や見方が多少異なるものの両方とも『オリエンタル』という名の元にある」ということ。日本人から見ると、アジアは中国や韓国などを指しますが外国人からみれば、これらの要素の他にアジアンリゾートといったエキゾチックな雰囲気も持ち合わせている。日本も含めた包括的な意味合いで捉えているわけです。この様々なアジアの視点が混在した「混沌としたアジア感、オリエンタル感」を作ろうとしました。
壁面や床面には石をふんだんに使いシンプルにまとめました。そこに照明機具や備品などを用いて要所要所に様々なアジア感をちりばめ、混沌とした感じを出していく。中国っぽいものがあったり、日本っぽいものがあったりと、アジア感をミックスしていったのです。そもそも神戸という街自体が異国情緒のあふれる場所。貿易港なので、様々な国の物が集まっているというイメージはちょうど良いと思いました。

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02.オーナーとデザイナーの信頼関係

小坂:「ザ・羽澤ガーデン」や僕が手掛けた「ザ・ルイガンズ」もそうですが、Plan・Do・Seeが扱うプロジェクトは歴史のある建物をリノベーションなどの形で再利用するケースが多いので、施設に歴史の重みがある。このような背景があるので「ウィズ ザ スタイル福岡」にしても「出来立て感」を極力なくしたかったので、チャペルと別に建つ2つの建物は意図的に増築したような感じにしました。今回は新築ビルなので外観は無垢な感じにどうしてもなってしまう。個人的に「つるつる、出来立てホヤホヤ」ってなんか恥ずかしいものがあるのですよね。その中でどのようにして「出来立てホヤホヤ感」をなくすかは、デザイナーとして僕の腕の見せ所。出来上がった時にすでに歴史があるような感じにしたい。特に今回はホテルの背景を考えると、なおさらのことでした。
通常のホテルデザインでは、ワンパターンになることを避けるため、客室とパブリックスペースで異なるデザイナーを起用する傾向にあります。しかし今回は僕がすべてを手がけるということで、「オリエンタル」という一本の串を通しながら、全体的に「出来立て感」をなくすというミッションが与えられた。難解な作業でしたが、野田さんが僕に信頼を置いてくれているからすべてを任せられているのだろうし、まさにそれこそPlan・Do・Seeとの仕事の醍醐味でもあります。

岡田:竜さんと野田との信頼関係の話を聞いていると感動して泣けてきますね。(笑)Plan・Do・See流の物づくりは、コンセプトからではなくて「何がかっこいいか」「何が楽しいか」「どうやったらゲストをあっと言わせられるか」から入るのです。「ターゲットは何十代のこんな人」っていう話はほとんどしないのですよ。

小坂:それはそうだね。デザインにしてもそのような制約はなかったなぁ。

岡田:抽象的な考えをベースとしているので、雑多で散漫な考えになりがちですが、そこは竜さんと野田がバランスを取っていると思います。お互いが尊重し合っている。2人を見ていてうらやましい関係だと思っていました。

小坂:けど岡田さんも一人でこの現場をしきっていて大変だったと思いますよ。3年の間に何回も野田さんへのプレゼンがあったけど、だんだん野田さんは「竜さんがよければいいよ。任せる」みたいな感じになり・・・。信頼されているのは嬉しいけど、「俺が全部背負うのかよ」と(笑)。野田さんはお金をいっぱい使ってこのホテルを作るわけだから、「やっぱりこうすればよかったな」と後悔のないものをこちらとしても作りたい。そこで岡田さんに間に入ってもらい、野田さんとの接点をできる限り作ってもらいました。

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03.誰よりもまず、地元の人々に愛されたい

岡田:このホテルはいろんな人に使ってもらいたいのです。今、東京を含めて、ある程度高級なシティホテルって値段からして使える人が限定されるじゃないですか。

そこで「オリエンタルホテル」では高級ホテルにあるグレード感は保ちつつも、ハレの日にちょっと背伸びをしたような値段で食事や宿泊に訪れてもらえる場にしたい。ディナーにしてもメインダイニングのTHE HOUSE OF PACIFICでは4,000円からコースをご用意しています。
そもそもホテルはその街の外から来る人で成り立つ場ではなく、地域の人のものだと思っています。まずは地元の人に家族での食事や、記念日、お祝いなどでレストランや宴会場を使っていただき、認知してもらい愛されるのが第一歩。実は名前を「オリエンタルホテル」と決めて発表した後は、地元の50歳以上の方の反響が予想以上に大きかったのです。地元の名士の多くがかつてこの「オリエンタルホテル」で結婚式を挙げられていたのですね。そのような背景もあり期待値が高く、いままでより「やらなきゃな」っていう意気込みが強いです。でも、Plan・Do・Seeが運営するのだから、そこには遊び心や新しさがないとつまらない。バランスが大切ですね。

小坂:ワクワク感という意味では、ウェディングとしての引き合いもこのホテルではあるよね。ただ歴史のある重厚なつくりで集客するのではなく、花嫁さんや両親に「ここで結婚式を挙げたい!挙げさせたい!」と思わせる作りや雰囲気が必要でした。僕や野田さんはどちらかというと暗くて、夜っぽい雰囲気が好きなのです。たとえば石にしても僕らの趣味を反映させるとグレーの石を使ってしまう…。(笑)

岡田:ブライダル会場は女性の目線じゃないですか。そういう意味では野田も苦手な分野。そこで幅をきかせるのが我々の運営する施設の最前線で活躍している女性です。今回のプロジェクトでは彼女たちの意見が、多岐に渡り反映されました。

小坂:そのような経緯もあり、チャペルには明るいベージュの石を使っているのです。

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04.次のステージへ

岡田:これまで開発の担当者として改修や改装は手がけたことがあるのですが、見えないものをゼロから作るというのは初めての経験。とにかく勉強になりました。ただ個人的にはホテルという業態を手がけたことに対しては、重きを置いていません。僕は運営側の立場なのでハコの中身は問わず、すべての物件において「みんなが長く愛せるものを作りたい」という考えを念頭に置いています。

小坂:そもそも、一からホテルを作るというチャンスはあまりないよね。A.N.Dの若いスタッフもいろいろ勉強させてもらったと思う。何度もせっぱ詰まったことがあったけど、その度にギブアップしようとしていた。「時間もないし、どうしましょう……」って。でも、「お金や時間がなくても、頭を使えば面白いアイデアが生まれるだろう!」って。一緒に考えれば答えが出てくるのです。今回は苦悩と思考と名案の繰り返しでした。

岡田:途中、みんな半泣きになって「昨日大先生にダメ出しされて……。どうしたらいいかわからない」って弱音を吐いていたのが今では良い思い出です。(笑)今回のプロジェクトは本当にすごく良いチームでした!

小坂:大先生って俺? 俺ダメ出しした? ……したか。(笑)でもね、本当にいい経験だったよ。また、野田さんにとってもこれがまた新たなオーナーとなるホテル。彼のことは昔から知っているけど、Plan・Do・Seeがこのようなシティホテルまでも手がけるステージに立っているっていうのは、一友人として感慨深いものがあるよね。ベクトルがどんどん上昇していて、そのライブ感がすごい。この波やプロセスに携われることができ、また彼から信頼されることもデザイナー冥利に尽きる。本当にいい3年間でした。また次もよろしく!

岡田:昨日、3年間一緒に汗をかいた同僚と飲んでいた時こう話していたのです。「5年後か何年後かわからないけど、ニューヨークで展開する案件の話が来たら、またこのチームに関われたらいいね」って。僕、それが近い将来にできる気がしてならないのですよ。なんせ、このチームですから!

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オリエンタルホテル

〒650-0034 兵庫県神戸市中央区京町25
Tel 078-326-1500
http://www.orientalhotel.jp


文:柳澤大樹(フリーエディター)
編集:大原信子(株式会社ナカサアンドパートナーズ)